インドネシアには大きく数えても300以上の民族がいると言われています。そのうちの一つであるミナンカバウは、インドネシアの西スマトラに住む民族です。
- ミナンカバウの歴史や文化を知りたい
- 母系社会ってなに?
- 西スマトラに住む人々の「今」について知りたい!
という方にとても興味深い内容となっていますので、ぜひご覧下さい♩最後にはパダンでしか見られない街並みを載せています^^
ミナンカバウとは?〈語源・由来〉
Minangkabau(ミナン語)とは、インドネシア語で「menang kerbau」。「勝利の水牛」を意味しています。
なぜ、民族の名前が「勝利の水牛」なのでしょうか。

昔、攻め入られそうになった西スマトラの人々は、戦いで闘牛を提案し、敵の大きな牛に対して西スマトラの人々は子牛を使うと言いました。
そのハンデとして、子牛の角に剣をつけることになり、勝つための作戦として闘牛当日まで子牛に何もエサを与えませんでした。

空腹で戦いを迎えた当日。
子牛は試合が始まるや否や、相手の乳をめがけて一目散!下からもぐりこみ、角につけていた剣で突き刺し勝利したのです。
そうして、西スマトラに住む人々は水牛を民族のシンボルとし、屋根の形や民族衣装を水牛の角をかたどった形にしたのです。

民族衣装に表れる誇り

日本の着物のように、現在生活をするときには着用しませんが、正装をするとき、伝統的な踊りを披露する時に着用されます。

頭に着用している布はやはり水牛の角をかたどっています。
それでは、「勝利の水牛」に誇りを持っているミナンカバウ民族はどのような社会制度・文化を持っているのでしょうか。
ミナンカバウは世界最大の母系社会〈昔と今の社会〉
ミナンカバウ民族は世界最大級の母系社会と言われています。

母系社会とは、母親の系統によって家族・血縁集団が組織されている社会。父親は子に法的権利をもたず、地位の継承や財産の相続は、母の兄弟からその甥(おい)へと伝えられる。
デジタル大辞泉
具体的に、家は女の所有物です。
5人家族(母・父・子供[男男女])で住んでいるとすると、母が所有するこの家は、子供が大きくなり結婚したとき、娘に受け継がれます。
息子たちは結婚後、必ず家を出なければなりません。

母系社会ということもあり、パダンに住む女性たちは仕事場でも男性に引けを取らず活躍しています。
例えば、筆者が日本語を教えていた高校の校長先生は女性で、教師の比率も女性が圧倒的に多い印象を受けました。

しかしながら、伝統的なミナンカバウの母系社会は少しずつ変化していると言えます。
近年、インドネシアで色濃く根付いているイスラム教は父系社会です。西スマトラも例外なく、民族のほとんどがイスラム教です。そのため昔から受け継がれてきた母系社会の一部は形を変え、イスラムの社会と融合した社会制度になりつつあります。
伝統的家屋は”家”だけじゃなかった!
最後に、西スマトラといえばこれ!というほど特徴的な家屋についてご紹介します。

水牛の角をかたどった屋根を持つ家の建築様式は”Rumah gadang”(ルマガダン)と言います。ミナン語で”gadang”は大きいという意味。
この水牛の角をモチーフとした家は、現代社会に大変馴染んだ建築様式です。
街並みに馴染む色々な「ルマガダン」を大公開!

とにかく、街の建物はとんがり放題!そんな所までとんがるのか。というくらい、ルマガダンの建築様式は風景に馴染んでいます。
ここで、実際に筆者がパダンで暮らしている時に撮り溜めた色んな屋根を大公開します!
こちらはパダン第九高校(左)とパダン第一高校(右)です。立派に尖る校舎の屋根は年季が入っていて伝統を感じます。ちなみに、校門もこの形です…
こちらはなんと、市役所やショッピングモールの入り口にある警備員室です。小さなボックスにも立派な屋根が付いています。もはやルマガダン(大きな家)ではありません( 笑 )

大通りに面する大きな銀行は、パダンの街を盛り上げてくれるような立派な屋根!初めてパダンに到着した時は、この建物が一般的な銀行だと知り衝撃でした。(この銀行のすぐ近くに住んでいました)

こちらはパダン国立大学の写真です。彼氏の母校を見て回った時に撮影しました。校門も校舎も見事にとがっています。立派なモチーフを常に身近に感じることによって自分のアイデンティティに誇りを持てそうです。

2017年に完成した新しい最大級モスクMasjid Rayaまで!ミナンカバウを象徴した形になっています。筆者が初めてパダンに降り立った時にはまだありませんでした。
___番外編___

こちらはインドネシアの主要都市に展開されている星4つの人気ホテルGrand Inna hotel(グランドイナホテル)。パダンにあるこちらのホテルでは、なんと枕までミナンカバウのモチーフとなっています。
いかがでしたでしょうか。地域によってガラリと雰囲気が変わるインドネシア。西スマトラの魅力もまだまだ深そうです。

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